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LOVEマシーンモーニング娘。
99年発売。ミレニアムへの期待と、それより少しだけ多い不安を内包させた、90年代最後の国民的ヒット曲。今改めて聴くと古めかしさを隠せませんが、しかし発表当時から「新しい」感じはなく、むしろ懐かしい、安心する響きを持っていました。アイドルを語るなんてオッサンみたいですが、佐藤は30歳のオッサンであり、みんなが大好きで大嫌いだったゼロ年代もまた、オッサンが動かしてきました。10年代を動かしているのがオッサンであるのと同様にね。
メタルギアソリッド2コナミ
01年発売。911当日、作家デビューしたばかりの佐藤は、「明日から、この事件を語る連中で地球はいっぱいになるだろう。でも、おれは語らないぞ。何も感じなかったから。何かを感じるのはオッサンの証拠だから」と誓いました。事件から数カ月後、自粛をくぐり抜けて無事に発売された本作は、『1』にはまだあった解りやすさが消え、人工的な悪夢をくり返すストーリーとなっていまして、それは、夢のような現実(つまり現実のような夢)を生きたデビュー直後の佐藤にも、ゼロ年代前半の世界風景にも、ぴったり嵌りました。
ファウスト講談社
03年創刊。この雑誌がゼロ年代の小説群に何をもたらし、何を失わせ、何を前進させ、何を後退させたのか。人の数だけ主張があるでしょうから、皆さん、自分の見たい現実を見てください。旗振り役の1人だった佐藤の感想は、「とても楽しかった」という、至極まっすぐなものしかありません。明らかな青春状態で書いた、明らかな青春の書。
虐殺器官伊藤計劃
07年発売。ゼロ年代の到達点といったところでしょうか。たった1冊の本でSF界はひっくり返り、余波は新本格ミステリにも、純文学にも、エンターテインメントにも……つまり、小説界の大部分に及びました。20代の佐藤が最後まで嗤いつづけた911。その瓦礫から生まれた奇跡のような小説を読み終え、30歳からは、10年代からは、青春状態に頼るのはやめよう、もうオッサンになったのだからと誓いました。2011年、日本は大震災とメルトダウンした原発に包まれています。
新世界より貴志祐介
08年発売。「セカイ系」という、「スチームパンク」や「印象派」のように、レッテル乃至は罵倒として使っていたのに、いつの間にか1つのジャンルとなったこの言葉が、ゼロ年代を席巻し、無数のセカイ系小説が生まれました(それにしても、セカイ系って言葉、初めて書いたよ。くすぐったい・笑)。上下巻として刊行された長大な本作を評価する際、どのような表現が適切なのかは知りませんが、セカイ系をめぐる1つの集大成なのは確実でしょう。