フリッカー式 鏡公彦にうってつけの殺人佐藤友哉

云わずと知れた処女作。「発表当時は理解されず非難を浴びたが、後に評価される」という、デビュー作として極めて正当なコースを歩んだ優等生です。発表当時、褒める人も貶す人も共通して使う言葉として、「若いから書けた小説」というものがあります。佐藤も三十歳になりまして、そのようなことを口にした人々の気持ちが解るようにはなりましたが、だっっっさい表現だなあと思います。老人になる。その事実は最後まで隠さねばならないのに、なぜ前に出したがるのでしょうね。とんがった本読みは講談社ノベルス版を是非。

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水没ピアノ 鏡創士がひきもどす犯罪佐藤友哉

云わずと知れた代表作。今でも「佐藤さんの小説の中で一番好きです」という声を多くいただきます。「鏡家サーガ」正伝としては、2011年現在でも最新作として存在していますしね。ちなみに、あとたった四作書けば完結する「鏡家サーガ」は、刊行順もストーリーもラスボスも決まっているので、首を長くして待っていただければと思います。以上、読者サービスという名の嘘でした(嘘)。混沌とした小説が好きな本読みは講談社ノベルス版を是非。

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クリスマス・テロル invisible×inventor佐藤友哉

云わずと知れた問題作。佐藤友哉を知らなくとも、タイトルに聞き覚えのある方は多いのではないでしょうか。今現在の佐藤友哉を生成する要因となった一作でもあり、そういう意味では重要な小説でして、執筆中から執筆後に至るまで、たくさんの思い出が詰まっています。とはいえ、『クリスマス・テロル』を起点として作られた「佐藤友哉」というアイコンやキャラクターを、三十歳になっても続けるのは原理として無理なので、同時にセンチメンタルな気分にもなります。親切な小説しか読めない本読みは講談社文庫版を是非。

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1000の小説とバックベアード佐藤友哉

云わずと知れた受賞作。本書が三島由紀夫賞を受賞したことで、文学業界にも参入できましたし、『王様のブランチ』にも出られましたし、名刺代わりにもなりましたが、いつの世にもデメリットはあり、「佐藤友哉は新本格ミステリを完全にやめた」という、ベタなレッテルを貼られる結果にもなりました。しかし、新本格ミステリをやめることなどできるのでしょうか? 佐藤はどこで書こうと、何を書こうと、新本格ミステリのつもりで執筆し、発表しています。そこから逃れることなどできませんし、逃れるつもりもありません。

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デンデラ佐藤友哉

云わずと知れた大傑作。あらすじは「五十人の老婆vs巨大熊」。そんな『デンデラ』の映画が、六月二十五日公開予定。監督・脚本は、『楢山節考』を撮られた今村昌平監督の御子息、天願大介さん。キャストは浅丘ルリ子さん、倍賞美津子さん、山本陽子さん、草笛光子さん他。配給は東映。製作は『おくりびと』のセディックインターナショナル。勝てる要素しかない。

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