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はるかな国の兄弟アストリッド・リンドグレーン
『長くつ下のピッピ』や『やかまし村の子どもたち』で有名なリンドグレーンによる途轍もないファンタジー作品。美しく勇敢な兄と、そんな兄を慕う物語の語り手である幼い弟、ふたりの兄弟がはるかな国(死後の世界)で過酷な冒険をします。そして最後はとうとう、その死後の世界から次の死後の世界へと旅立ちます。本を閉じて、しばし言葉を失いました。子ども向けの本としてこの物語が描かれたことの意味を考えました。このファンタジーを必要とする全ての人を想いました。河合隼雄先生の『ファンタジーを読む』で本書を知りました。
夜の言葉―ファンタジー・SF論アーシュラ・K.ル=グウィン
多くの人が現実の厳しい苦難にあるいま、ファンタジーを書くことの意味を考えたいです。フィクションを書くことの意味、読むことの意味を考えたいです。人間はなぜ空想の物語を必要とするのか? それは現実からの脆弱な逃避なのか? それとももっと大切なことなのか? 災害にも、病にも、暴力にも、人間は絶対に勝てません。世界を呪う以外にないほど人は無力です。その世界に在って、お母さんは愛し子に「おはなし」をしてあげます。人はそうやって生き延びてきたのです。
なぜ私だけが苦しむのか―現代のヨブ記H.S.クシュナー
苦しみとは、必ず私ひとりだけのものです。「私の苦しみ」は誰かと分かち合うことも、わかってもらうことも出来ません。あらゆる「救いの言葉」は当事者でないから吐くことの出来る、役立たずの御託なのかもしれません。しかしそれでも。それでも、私たちの身体にはぬくもりがあり、私たちの間には言葉があります。大震災後、関西テレビ『スーパーニュースアンカー』で宮崎哲弥氏が本書を紹介されていました。いま苦難にある人にとって、一つの深呼吸になってくれるかもしれない本だと思います。