罪と罰ドストエフスキー

大人は自分が凡人であることを恐れません。でも少年は違います。少年にとってもっとも厳しく重要な試練は「自分とは何か?」という悩みではなく、「自分は天才ではない。特に珍しくもないただの凡人だ」という事実をどう受け入れるかです。この痛みが如何に大きく深いものか、みんな大人になるとそんなこと平気だったようなフリをしますが、この本には血が噴き出すような正確さで描かれています。そして、この取り返しのつかない苦しみはどこへ行き着けばいいのか、それが最後の場面で示されています。

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THE BLUE HEARTSザ・ブルーハーツ

中二ぐらいになると自分の周りには世の中ってヤツが在ることがわかってきます。自分を縛ってくる、圧迫してくる、容赦なく傷つけてくる。しかも、世の中は正体不明で圧倒的に手強い。だから、少年には武器が必要だ。世の中から自分の身と心を護るための、世の中にせめて一矢報いるための、武器が、どうしても必要だ。ロックやオートバイやアニメや文学がどうしても必要だ。

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コンプリートセレクション 仮面ライダークウガ 変身ベルト アークルバンダイ

少年マンガのキーワードは「くやしさ」です。主人公は「くやしさ」を動機として、何者かになることを求めます。無力、弱さ、未熟、未熟ゆえの過ち。自分の「幼さ」がくやしい。そんな経験が少年を旅立たせます。成長したい。自分が憧れる何者かになりたい。それが少年の物語です。「変身」は男の子の根本願望です。女の子がお姫さまに変身したいというのとちょっとだけ違うのです。それはもう、男の子のいわば宿命です。

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ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破 庵野秀明

「新世紀エヴァンゲリオン」はその作品丸ごと全部が少年の魂です。アニメ、ロボット、怪獣、女の子、友達、親、世の中、僕、論争……あまりに裸過ぎて痛ましいほど内も外も隅々まで少年。その「エヴァンゲリオン」が10年以上の時間の後、同じ作者たちの手で書き換えられつつあります。少年には必ず人に言えない後悔があります。青春期に深い悔恨を持っていない者はいません。だから人は歯を喰いしばってでも「大人」になります。 今「エヴァ」は、誰のために書き換えられ、その物語は誰に贈られるのか?

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時をかける少女 大林宣彦

「これは愛なの? これは愛するってこと?」生まれてはじめて「愛」という言葉を口にしたのはいつだったろう? 「愛」という言葉が映画の宣伝文句や流行歌の歌詞ではなく、自分自身にリアルに関わる言葉とはじめて感じて怖いような気持ちになったのはいつだったろう? 「僕はベテランの少年です」そう大林宣彦監督はご自身のことを仰います。ベテランの少年、素敵ですね。

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