リアリズムの宿山下敦弘

山下敦弘監督の名前を「あつひろ」と読んでいた。「のぶひろ」だとしったのは数年前だった。どうでもいい話だけど。山下監督の描く、さえない男の感じが僕は好きで、とくにこの映画のどんよりとした曇り空の雰囲気はほんとうに好きだ。海辺のカットなんて奇跡だとおもう。この才能に嫉妬である。山下監督にお会いしていっしょにご飯を食べたとき、この作品の撮影時の裏話を聞きまくったけど、そんな僕のことを、気持ち悪いやつだとおもってないといいなあ。

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マグノリアポール・トーマス・アンダーソン

ある映画批評家が、同監督作品の『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』の批評で、野心家の主人公とこの監督を重ね合わせていた。僕もなぜだかその批評に納得してしまった。ポール・トーマス・アンダーソンという監督がどんな性格なのかさっぱりしらないのだけど、なんとなく、とてもIQが高くてハンサムで野心家なんだろうなというイメージがあった。みなさんはどうですか。『マグノリア』は3時間以上もある長編だ。登場人物たちの感情の渦にのみこまれて心がぐらぐらとゆさぶられる。この監督の作品はどれもすごいのだけど、一番、観返したのは『マグノリア』だった。一時期、すべての映画のなかで僕のベストだった。その次に観返してるのは『パンチドランク・ラブ』。はやく新作来い。

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サクラダリセット河野 裕

ある日、角川書店の編集者からこの本のゲラが送られてきた。読んでみて気に入ったら推薦文ください、とのことだった。その時期、いろんな本の帯をたのまれていたので、これはさすがに断ろうとおもって読みはじめたら、作者が天才だったので断れなかった。新人賞をとらずにデビューする作家の第一作目である。なんの冠もないままに本を出すことになるわけだ。自分の名前がすこしでも宣伝の足しになるのなら利用してもらおうとおもった。この天才をこの一冊きりでおわらせてはならないと。でも後からおもえば、こんな天才なら僕が力を貸さずとも、そのうちどかーんとブレイクして、すぐに僕の年収をも上回っていただろうから、余計なことをしたかもしれん。それはともかく、僕はこの作者がうらやましい。この作者のセンスがうらやましい!

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劇場版 「空の境界」 矛盾螺旋平尾隆之

某企画の関係で『空の境界』のDVDをごっそりといただいた。それをようやく最近になって観ることができたのだが『矛盾螺旋』の出来がショッキングだった。いつだったか知り合いのアニメ関係者が「自分の好きな演出家が『空の境界』のどれかの回を担当しておりその人はたしか乙一さんとおなじかすこし下くらいの年齢ですよ」と言っていた。また別のアニメファンは「『フタコイオルタナティブ』のチーフディレクターの人がすごいんですよ。『空の境界』の監督もしてるんですよ」と言っていた。みんなが口をそろえて言ってた天才はどうやらこの人のことだったらしい。平尾隆之監督。この人、さては、天才だな! 自分と同年代でこんなの作れるとか! 嫉妬!

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インセプション Blu-ray & DVDセット プレミアムBOXクリストファー・ノーラン

この映画を撮ったクリストファー・ノーラン監督も、『マグノリア』の監督とおなじような才気を感じて嫉妬。『インセプション』は人の夢のなかに入りこんで情報を盗んでいく人たちの話。なんとなく『ダークシティ』と比べてしまって、僕は断然、『ダークシティ』のほうが好きだった。『インセプション』の方はビジネススーツを着た有能サラリーマンが作ったかのような印象があって胸がときめかなかった。というような否定的見解もすべて嫉妬のせいだとおもう。いろいろ不満はあったけれど、それを差し引いてあまりあるほどの衝撃を『インセプション』に感じた。クライマックスにむかって高まっていくボレロのような映画。

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