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ローマの休日ウィリアム・ワイラー
子どものころから好きだったけど、最近、観返してやっぱり好きだった。大人になってからようやくわかる脚本技術の高さがあった。永遠に語り継がれるもの、というのは、きっとこういうものなんだろう。内容は、ヘップバーン演じるアン王女が、ローマの町にこっそりと外出して、たまたま知り合った新聞記者と観光するというもの。ほとんどすべてが名場面という奇跡のような映画。ちなみにこの監督の『コレクター』という映画も大好きだ。そちらはもてない男が女の人を拉致する話。どちらも傑作!
鏡アンドレイ・タルコフスキー
タルコフスキー監督の作品。映像の断片をつなぎあわせたような、詩集のような映画。物語がほとんどないかわりに、タルコフスキー濃度は高めだとおもう。内容をうまく説明できないけど、世間一般には、自分の母親のことを語った自伝的な映画だとよく言われている。でも、この映画で描かれている親子は、人類そのものを表していているようにおもうけど、みなさんはどうおもいますか。抽象的であるが故にいろんな見方ができる映画。崇高な芸術に触れたような気持ちになる。
ミツバチのささやきビクトル・エリセ
存在が奇跡。この作品のすごさを語るのが僕はこわい。この作品について語ることは、映画というものについて自分がどれだけのことをかんがえているのかをさらけだすことだから。画面が綺麗で、照明も美しくて、主演のアナ・トレントは神すぎるけど、そんな言葉だけでは語りきれない思想がつまってる。この映画は、今までどれだけの人に霊感を授けてきたのだろう。この映画を観ていなかったら、はたして自分は、自分だったのだろうか。ちなみにこの映画はもともと、ホラー映画を製作しようとしてはじまった企画だったらしい。その段階ではたしてだれが想像していただろう、映画の神秘そのものが完成するだなんて。
2001年宇宙の旅スタンリー・キューブリック
キューブリック監督が人類映画史に打ち立てた巨大な金字塔。子どものころに観たときは退屈でさっぱり意味がわからなかったけど。CGが発達して、この世に作れない映像はなくなったはずなのに、この作品を凌ぐSF映画にはなかなか出会えない。なんか、いろいろ超越している。人間の祖先が描かれたかとおもえば、クラシック音楽にのせて宇宙船が登場し、木星のそばまで僕たちを連れて行ってくれる。人類は石板に誘われるかのように闘争して進化する。キューブリックの映画を観ていると父と子の関係を思い出す。子どもがいつの日か父を倒して乗り越えるという構造だ。この映画の場合、大勢の子どもたちが闘争して勝ち上がって高みにのぼってくるのを見守っているような父の視線を感じる。
野獣死すべし村川 透
邦画のなかで『ミツバチのささやき』に対抗できるような作品があるとすればこれだとおもう。だれからも共感を得られないとおもうけど、このふたつの作品が、なぜだか僕のなかではおなじ棚にしまいこまれているのである。このふたつの映画は、おなじものを、男性的に描いているのか、女性的に描いているのか、という程度の違いのような気がする。主人公を演じる松田優作さんは、死者があるいているように顔色がわるい。死そのものである。名作映画を観ているときに感じられるような、時間が奇妙に引きのばされて次元が歪むような、そういうどこかへ連れていかれるような瞬間がこの映画にもある。