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世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド村上春樹
マンガ家としての2作目「世界の終わりの魔法使い」のネームをほぼ完成させた時に、「こんなふうな地図をつけませんか」と編集さんから渡されたのがこの上下巻。そう、「世界の終わりの魔法使い」というタイトルを思いついた時、西島は『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』を特に意識していなかったのです。それにしては共通項がかなりありますが。それにしても地図がついている文庫って良いですね。
浮雲林芙美子
『ディエンビエンフー』の参考資料として読んだ1冊。とにかく西島はベトナムが関連していれば、文学でも旅行ガイドでも写真集でもレシピ集でも何でも読むのです。舞台はフランス領インドシナ、つまり今のベトナム。異国へ赴任してきた若いタイピストゆき子と妻のある富岡とのつかの間の恋。その幻想を思い出しながら、敗戦後の東京でグズグズしてしまう2人。うーんダメ男富岡のテキトーさ、かなりヒカル・ミナミぽいかも。
野火大岡昇平
同じく『ディエンビエンフー』資料として読んだ1冊。何らかの戦争状況がそこに描かれていれば、西島はとりあえず読むのです。もっともこの作品の舞台はベトナムじゃなくてフィリピンですが。病によって部隊を離れた兵士が、ぎりぎりの飢餓状態の果てに遭遇する問題は、同じ人間の肉を食べることは可能か否か。宗教も倫理も通用しない戦場でのあがき。いつか僕もそういうシーンを描くかもしれません。
第四間氷期安部公房
純文学にはあまり興味が持てなかった西島ですが、思い出すとSFや幻想文学系は読んでました。つまり安部公房やフランツ・カフカの作品群。単にSFと呼ぶには余りあるシュールさや思弁性が新潮文庫のSF作品群の特徴という印象ですね。しかし『第四間氷期』は水棲人間や未来を予言するコンピューターなどSFらしいガジェットに満ちた長編作品。ばしっと決まった漢字5文字のタイトルもかっこいい。
かもめ・ワーニャ伯父さんチェーホフ
チェーホフの戯曲「かもめ」をヒップホップとして解釈した演劇「長短長(または眺め身近め)」を先日観に行ってとても面白かったので、改めて文庫を読んでみました。演劇は全編日本語ラップでしたが、もちろんそんなことはなく。しかし妻や愛人らを巻き込んでのクリエイターの悩みは普遍的な物語。大谷能生×中野成樹によるサントラ盤「みずうみのかもめ」もおすすめです。