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クォン・デ もう一人のラストエンペラー森達也
ベトナムがまだフランス領だった時代、グエン朝皇帝の血を引く者として革命に担ぎ出されて、東遊(ドンズー)運動の果てに横浜へ流れ着き、二度と故郷ベトナムへ戻ることなく日本で死んでしまったクォン・デ侯。偉人どころか主体性に欠けたうえ野心もなくひきニートぽさすら漂う人物ですが、最近僕は彼を『ディエンビエンフー』の主人公に重ねています。
愛人 ラマンマルグリット・デュラス
フランス領インドシナの時代。貧乏になってしまったフランス人教師の娘と、華僑の大金持ちの青年とのベトナムでの恋。中国人の愛人という当時の屈辱的な立場と、加速する性愛。デュラス自身の自伝的な小説がこの『愛人 ラマン』。デュラスの奔放さや欲望に素直なさま、さらに若い頃の美貌は『ディエンビエンフー』のおばあちゃんのモデルになっています。
ちょっとピンぼけロバート・キャパ
ノルマンディー上陸作戦など、数々の戦場の決定的瞬間を捉えてきた写真家ロバート・キャパ。しかし彼がベトナムで死んだことはあまり知られてないかもしれません。テレビという戦争報道メディアの変革期を待たず地雷を踏んで死亡。ベトナム戦争は彼のダンディズムを必要としなかったのです。世代交代の無情。『ディエンビエンフー』のインソムニアのキャラクター造形の参考になってます。
ホー・チ・ミン伝チャールズ・フェン
ベトナムの革命家といえばホーおじさんことホー・チ・ミン。無欲で質素、仙人のようなエキゾチックさが印象的ですが、しかし実際のホーは海外留学や投獄、名前を何度も変えたりと、怪しくも輝かしい経験の持ち主。「ベトナムは負けない、なぜなら絶対に音をあげないからだ」という言葉の通り、相当な頑固者です。僕は「スター・ウォーズ」のヨーダを見ると、ホーチミンを思い出します。
泥まみれの死沢田サタ
ピューリツァー賞を受賞し、ベトナム戦争を代表する写真家になった沢田教一の人生を、個性的な妻の沢田サタが記した本。若さ故の一旗揚げる感覚で現地入りし、戦争という場所に居合わせシャッターを押すという行動力こそが、彼の才能だった気がします。ロバート・キャパが大手メディアだとすると、1人でUstream配信してる感じ。現代にも通じるし、なんとなく時代に居合わせちゃった感じは『ディエンビエンフー』のヒカル・ミナミのモデルでもあります。