「——そういえば、僕の“殺し方”を直に君に見せるのは、これが初めてだったね。アイリ」 英霊・ランサー、そしてそのマスター・ケイネスに対して“魔術師殺し”の本領を発揮し、自らの妻・アイリスフィールに向かってそう嘯く切嗣の見せた戦略は、長く連れ添ってきたアイリスフィールすらも瞠目させる、余りにも悪辣な手法であった。切嗣を“外道”と断じるセイバーと、“騎士道”が世界を救済する事は決してないと貶す切嗣……いよいよ二人の間に横たわる溝はその深みを増していく。しかし切嗣は己の信じる『正義』を貫く——それはかつて切嗣が“母”と慕った人を通して、幼き心に誓った理想(ユメ)でもあった。
一方、驚異的な宝具『王の軍勢』を誇るライダーに対して圧倒的優位を得るために遠坂時臣がアインツベルン陣営に持ちかけた「共闘」は、言峰綺礼を聖杯戦争から“完全に”退場させるというアイリスフィールの提案を時臣が許容した事で成立となった。切嗣と相対し、その戦いの果てに生涯求め続けた“答え”を得ようとした綺礼はその結末に歯噛みするが、戦いを諦めていないことをアーチャーに見咎められ、時臣への謀反を決意する——斯くして、運命に選ばれた最後のマスターとサーヴァントが第四次聖杯戦争の影で互いに笑みを交わす……。
次第に佳境へと向かう聖杯戦争だが、いよいよ自らの体の異変に抗い切れなくなったアイリスフィールは、唐突に襲撃してきた英霊・ライダーに身柄を拘束されてしまう。アイリスフィールの危機を察したセイバーは鉄馬・VMAX改を駆り、ライダーを追う。刹那の狭間の“向こう側”を駆け抜けるセイバーに、果たして勝機は見えるのか——