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テーマ 「次世代」を感じさせてくれた作品

レギュラーセレクター 曜日

誰もが発信することが出来る時代。これまで、出版社やTV局は発信を独占することで特権的存在として大きなお金や力を持ってきました。クーデター軍は必ず真っ先に放送局を占拠します。つまりそれがその国を支配するということだから。かつて、反体制派の作家は原稿を命懸けで国外に送らなければなりませんでした。作品が世に知られるまでに何十年も掛かる芸術家が平気でいました。人類はDNAに代えて言葉で情報を伝達するようになったから爆発的に進化したという説もあります。人類社会は凄まじい加速を体験することになります。

私にはもう出版社はいらない〜キンドル・POD・セルフパブリッシングでベストセラーを作る方法〜アロン・シェパード

「自分の本を出すことが夢だ」と語ることが出来ました。今だと笑われそうですね。かつて、本が出るということには「世の中に認められる」というような意味が含まれていました。ところでその「世の中」とは今、具体的には誰と誰のこと? 「世の中」さん、近頃なんだかすっかり姿が薄いですね。もう表情も判然としません。本を出すこと自体の障壁はかつてに比べればほとんどゼロになった観があります。地味だけど、これはひとつの革命です。そして問題は既に次のステージに移りました。

iPad2Apple

ずっと「一斉に同じものを大量に」が大きな価値であり力でした。その時代も終わりましたね。「有名」の価値も暴落しました。「国民的スター」も「強いリーダー」も金輪際、登場しないでしょう。雑誌や新聞における「安価で」、「速度が速く」、「量産が利く」といった部分での、紙の優位性は完全に失われました。iPadという商品自体がどこまでの普遍性を持ち得るのかはまだ未知数ですが、多くの出版関係者にとってはこの小さなモノリスは「終わりの喇叭」を鳴らしに来た者に感じられました。

ツイッターノミクス TwitterNomicsタラ・ハント 津田大介(解説)

「一斉に同じものを大量に」の価値が下がるということは、その最たるものである「お金」の価値が下がるということです。「お金があればしあわせになれる」を未だに素朴に信じている人は、今一体どれだけいるのでしょうか? 「お金」は現在、いわば空位を埋めるための暫定チャンピオンです。「お金」に代わる頼りに出来る新しい価値を見つけること。自分なりの。それが「次世代」では非常に重要になります。ところで、この連載もツイッターで太田克史氏と知り合ったことがご縁です。

SION comesSion

生きてなさい。心をこするような掠れた声。二十代の頃、彼の声に励まされました。 ダビングした擦り切れそうなカセットテープ。CDデッキなんて僕は持っていませんでした。お金、無かったなあ。不安だったなあ。 それから二十数年。僕もすっかり分別臭いオッサンです。憧れだったCDは媒体自体がそろそろ終わりです。 でも、歌声はしっかり生き残り続けています。やっぱりすごく掠れた声です。うれしくなります。 僕はいまオッサンなりに、お金もないし、不安もいっぱいです。 がんばれ。がんばれ。 そうだ。何度目でも、始めたらはじまりです。

多読術松岡正剛

それでも、本は人類史上最強の媒体であることはまだまだ動かないと感じます。安価な大量消費商品としての優位性が失われたとしてもそれは本の本質ではないし、大量消費商品型のビジネスモデルが機能しなくなったとしてもそれは本のせいではないですから。本の凄みが発揮されるのはむしろ「次世代」においてかもしれません。本の読み方の基礎を学ぶことが出来る一冊です。

田中ユタカさん

66年生まれ。マンガ家。主な作品に『愛人[AI-REN]』、『ミミア姫』、『愛しのかな』、『もと子先生の恋人』。『初夜』などの純愛系作品、多数。“恋愛漫画の哲人”、“永遠の初体験作家”、“愛の作家”と呼ばれる。携帯コミックでも新作を意欲的に発表。

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