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テーマ この「才能」には、嫉妬せずにいられない……

過去のレギュラーセレクター

僕は、人の才能は「凄いなあ」と思っても、嫉妬することはないので、純粋に「凄いなあ」と才能を感じる人たちの、その才能溢れる作品を挙げた。僕にとって、才能を最も感じるのは、その「個性」だ。ほかの誰もやっていない手法や作風に出会うと、才能を感じる。映画でも、音楽でも、漫画でも、小説でも、ゲームでも、1年にいちどくらいは、そういう新しい才能に出会ってみたいものだ。

The Nothings of The NorthAmetsub

たぶん、彼の作品に出会ったのは、なにかのコンピレーションだったと思うが、最初は「良いセンスしてるなあ」というくらいのものだった。その後、何度か聴く機会もあったが、このアルバムでたまげた。特に1曲目が素晴らしい。音によって作られる世界。音だけにしか作ることができない世界。このアルバムによって「Ametsub」というジャンルが確立された。とてもユニーク。そして、とても音楽。このアルバムがヒットチャートに入る世界へ僕は行きたい。まだ若いんだよね。すごいなあ。ライブもとてもよいです。

PARABOLICAAOKI takamasa

彼の音楽と出会ったのは、彼のユニット時代のデビュー作のDVDだった。あまりにも素晴らしくて、カッコよくて、オリジナリティを感じて、そこに書いてあったメールアドレスに、感想のメールを送った。書籍や映像を含めても、そんなことをしたのは、過去、その一度だけである。それから数年して彼と出会うことができ、仲の良い友達となった。デジタルが演じるグルーヴ。シンプルで力強く、美しい。いつ聴いても、身体が動いてしまう。ちなみに、最近の作品はもっともっとグルーヴィー。この先、彼がどこへ向かって行くのかが楽しみだ。

fiveAnother Electronic Musician

エレクトロニックの世界で「僕が好む音のバランス」というものに対して、ここまで「ピッタシ」と感じたアーティストは彼の作品と出会うまではいなかった。ピッタシというか遙かに僕より上のクオリティ。例えば、上に挙げた、Ametsubや、AOKI takamasaであれば、すごいなあと思っても僕の作品世界とは、方向性が異なるわけだが、彼の作品の場合は「うわ、それだよ!」と感じてしまうから、困ってしまう。悔しい。知っている人は少ないと思うが、ぜひ聴いてみてほしい。気持ちがよい、居心地がよいと感じるのは、僕だけではないはずだ。

アヒルと鴨のコインロッカー伊坂幸太郎

結局のところ、この10年、僕の小説世界は、彼が独占していたように思う。同じように才能がある作家も多くいると思うが、彼の描く世界がとても好きなのだ。ある時期から、ずいぶん方向が変わってしまって、正直、僕には残念だったのだが、最近、また少しずつ、僕の好きな伊坂幸太郎が戻ってきてくれたように思えて嬉しい。ここに挙げたのは、彼の作品の中で最も好きなもの。「オーデュボンの祈り」や「重力ピエロ」、「死神の精度」、「終末のフール」なども好きです。新刊が出るたび、夜が楽しみになります。

おやすみプンプン浅野いにお

この漫画に出会ったときは、本当に驚いた。それまでも、浅野いにおさんの作品は読んでいたが、本当にびっくりたまげた。まだまだ漫画には、こんな可能性があったなんて。こんな感性が表現できるなんて。漫画というのは「絵」だ。そして、これは漫画でなければ表現ができない作品だ。なんというアイデア。そして、アイデアも素晴らしいが、内容も素晴らしい。作者は、どんなに精神と身体を削って、この作品を描いているのだろう。ぎりぎりの危ういバランスで、成り立ち続ける作風。僕にとって現在進行形では最高の漫画作品。

飯野賢治さん

70年生まれ。クリエイター。95年、ゲーム制作会社ワープを率い『Dの食卓』を発表、ゲーム界の風雲児となる。その後、『エネミー・ゼロ』『風のリグレット』などを発表。現在に続くクリエイターオリエンテッドなゲーム製作者の先駆けとなった。

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