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酔いどれ作家

もしかしたら僕は馬鹿かもしれない。

ここで頭に「もしかしたら」という言葉を付けているのはあえての謙遜であり、本当はすでに馬鹿野郎であることを8割方確信しているのだが、何に対しても断言してしまうことはあまりよくないと思っているので、

あえて「もしかしたら」をつけてみたのだが、やはり頭からここまでの数行分の文章を書いている段階で確信してしまった。

僕は間違いなく馬鹿であると。

 

また同じ失敗をしてしまった。バイクでこけてしまうなら、まだしょうがないと思う。

半年近く禁止していたことを解禁した数日後に、それで失敗してしまったとしたら、それはやはりどう客観的にみても、馬鹿といわざるをえない。

 

 

認めたくはないものだ。

僕はどうやらお酒に弱いようだ。お酒が好きであることは間違いないが、お酒には全然まるで強くないようだ。

 

格安の飲み放題の飲み会に誘われたまでは、ありだろう。飲み会だからやはり飲むだろう。ビールを飲むのもありだろう。ハイボールもありだろう。

日本酒にまで手を伸ばしたのはなしだった。日本酒のお代わりをしてしまったのもなしだった。

 

別のお店にまで足を伸ばしたのもなしだった。へべれけになるまで飲んでしまったのが特になしだった。記憶がうすぼんやりしてしまう瞬間まで飲んでしまったのが馬鹿だった。

配達まで三時間くらい空ければ大丈夫だと高をくくっていた僕は、ちょっと派手にすっころんで後頭部をしこたま地面に打ち付けられるべきだった。

 

 

案の定、寝過ごした。

深夜3時過ぎに電話をかけてもらうまで起きることができず、下の作業場でチラシ入れまではしたのだが、酔いが醒めていないことが一発でバレ、配達をすることが出来なかった。年下の先輩くんと専業さんに配達をしてもらったので、なんとかこの日の朝刊は事なきを得たのだが、もっとタイミングが悪ければ、もっと最悪な結果になっていただろう。

 

基本的に欠配、

無断欠席に該当することをしたら、一発でクビであることは仕事が決まった12月24日にも、所長からしっかりいわれていた。無断で欠席をしたわけではないが、本来配達するべき日に配達ができなかったわけだから、無断欠席に該当するといわれても、反論できそうになかった。

アルコールを抜くことをまずしないといけない、といわれていたので、水をがぶ飲みして喉に指を突っ込んで少しだけ吐いたあと、部屋で横になっていたのだが、その後もなかなか眠りにつくことが出来なかった。酔いが醒めてしまったという感覚ではなく、もはや単純に睡魔が訪れることがなく、横になって目を閉じながら裁定が下されるのを待っていた。

 

 

朝刊の配達が終わったタイミングで専業さんから電話がかかってきた。

結論だけいうと、大丈夫だった。

欠配ではない、反省文の提出、今週の休日は配達、ということだった。

この日の夕刊から配達も再開した。

 

お酒に関しても今後一切飲むなということではなく、きちんと時間を逆算して考えて飲んでください、ということだった。

「お酒好きなんでしょ? だったら無理に飲まないって決め付けることもストレスになるから」

苦い顔のまま頷くしかなかった。

 

割と普通に怒鳴られるくらい怒られるかと思ったけど、そうではなく、たまには失敗もするという文脈で怒られた。心が折れることもなかった。そのあと他の専業さんから個別で説教はされたけど。

 

 

今回は結果的には大丈夫ということだったけど、

一歩間違えたら、これのせいでクビということもあり得たと思う。本当にシャレにもならない話だった。

さすがに今、配達の仕事をクビになったら再び小説を書けるような精神的、肉体的状況になるまで、また一ヶ月以上かかってしまう。そんな負のスパイラルだけは回避できたと思うと、少しだけは安堵する。

 

本当に結局、笑い話にもならない告白話になってしまった。

反省文パート2という感じになってしまった。でもそういうことがあったということです。

 

幸いなことにこのことのせいで、配達所の人らとの関係が悪化するようなことや、僕がボッチで孤立したみたいな空気にもなっていないので、それは助かったと思う。あほやなー、とは思われていそうだけど。

僕のほうから発信する語り口からは笑い話に出来ないけど、配達の皆から振ってくれる話としては、ぎりぎり笑い話になるぐらいの話にはなっている。助かります。

 

僕って人間はたぶん死ぬまで、こういうレベルの馬鹿野郎なんだと思う。でも周りにいる人には本当に恵まれている、いつもいっつも助けられている。だからいつかは僕も誰かを助ける側にも回りたい。そんなことをふと思う、酔いどれ作家でした。

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