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読者レビュー

銀

決断できる人は2択で考える

ビーフオアチキン?

レビュアー:ラム Adept

題名の通りである。

小学生の頃、書道で新しく書いた1枚と前のものを比べて、上手に書けた方を勝ち残りで提出していたのを思い出した。

実際の生活でも、そうやって無意識に2択を続けて決断しているらしい。

それを、こういう時は必ず右、とかこうする、とか意識的に決めておくのが即断即決できる秘訣だそう。

面白いのは、あくまで決断できるというだけなところだ。
決断したから運気があがるわけでも成功者になれるわけでもない。悩まなくていいことでうだうだ迷う時間を節約できるだけ。
即断即決が全て!というわけではない。決断することで時間を有効活用するだけだ。悩むべきところで悩める時間があるように。

好きになる俳優がアヒル口ばっかりで、顔しか好きじゃないのかなってちょっと悩んでたわけ。
そういう顔が好きなんだからしょうがないって、割り切ればいいんだと書いてあってちょっと衝撃だった。
確かに考えてもどうしようもなかったわははははは!!

でも買い物とかは、悩みながら決める方が楽しいときもある。こういうのは、決断できなくて困ることでもない。そういう時間の使い方が嫌いではないわたしは完全に優柔不断です。
でも、いざというときにはきっと。

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2014.06.18

銅

「アニメを仕事に!」

14年に2、3時間で触れる

レビュアー:オペラに吠えろ。 Lord

 本書は、アニメの表舞台には出てこない仕事--「制作進行」にスポットを当てた一冊である。「制作進行」とは、その名が示す通りに「『制作』を『進行』させる役回り」である。といっても、実際に制作進行がアニメの具体的な作業(例えば、絵を描いたり)をするわけではない。そういった作業のための環境を整える。それが制作進行の仕事だ。

 著者は「リトルウィッチアカデミア」「キルラキル」といったTVアニメを手がけた制作会社トリガーで実際に制作進行~プロデューサーとして活躍している桝本和也氏である。具体的な例として上記2作品の資料が出されるため、読者は“本物の資料”を前に制作進行の仕事を目の当たりすることができる。

 制作進行の最大の特徴は、アニメの制作過程全てに関わることができることだ。その視点を通して、読者は“集団作業としてのアニメ”の成り立ちに触れることができる。制作進行は(言ってしまえば)裏方であり、だからこそ、そこには業界ならではの裏話があふれている。そういう意味で、これは、今までありそうでなかったアプローチだと思う。

 また、著者の桝本氏は「制作進行」の仕事を「実務」と「暗黙の実務」に分けてみせる。これは簡単に言うと、前者が「教科書の通りのこと」、後者が「著者が経験から学んだこと」だ。桝本氏は14年にわたってアニメ業界に身を置いているということだから、読者はこの本を読むだけで14年分の経験を知ることができるというわけだ。

 本書のページ数はせいぜいが200ちょっと。2~3時間で十分に読みきれる分量だろう。それだけの時間で、14年分の経験を全て……というのは言い過ぎにしても、それだけの一端に触れることができるのは、アニメ業界を目指す人にとってはプラス以外の何ものでもないだろう。

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2014.06.18

銀

「選挙フェス」17万人を動かした新しい選挙のかたち

週末、会いに行きます

レビュアー:ヴィリジアン・ヴィガン Warrior

 この本を手にした理由は、著者である三宅洋平が私の住む田舎から車で一時間ほどの街のライブハウスに来ると知ったからだ。
 名前は見たことあるなぁと思ったら、この前の選挙に出馬したミュージシャンだった。私は何故か、彼に良いイメージを持ってなかったので、とりあえずこの本を読んでみることにした。

 三宅洋平のインタビューとライター岡本俊浩の文章が交互に読める作りになっている。フォントの大きさや、紙の色まで変えてある。
 面白く感じたのは成功物語ではないということ。
 17日間の選挙活動に挑み、各地で「フェス」をやり17万人を超えるけして少なくない票を集めながら、負けてしまった三宅や彼をサポートした人々の姿が、生き生きと描かれる。
 17万の票を集めながらも当選できないという結果も、多くの人がいかに選挙のシステムを知らないかという事実を浮き彫りにしているようにも思う。
 私がいいイメージを持っていなかった理由も書かれていた。「メールメール大作戦事件」である。スタッフのミスで投票を依頼するメールを一斉送信してしまったのだ。
 当時、ツイッターで、私はこの件に関する多くの批判を目にしたことを思い出した。しかし、それだけの理由で彼の存在を全否定することもないように感じた。誰にだってミスはある。私だってある。

 この本を読むと、私とは住む世界が違い過ぎる人だという印象を強く受けた。
 ベルギー生まれ、早稲田大学卒業、リクルートに就職するも9ヶ月で辞めてバンド活動。
 「ヤーマン」という挨拶を使う。何それ? ヤーマンというのはレゲエ文化の挨拶なんだとか。知らんかった(笑)
 でもまあ、おおまかにではあるけれど、どんな人物なのかは分かった。理解しにくい人ではあるが、悪い人ではなさそうだ。とりあえずライブを観に行ってもいいかなと思い前売り券を購入した。
 つまり、この本には、私があんまり良いイメージを持ってなかった人がやるライブを「とりあえず行ってみようか」という気持ちにさせるだけの力はあるという事だ。
 もし話す機会があれば「ヤーマン」って言ってみようと思う。

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2014.06.18

銅

久弥直樹『サクラカグラ』

『ONE』『Kannon』の「次の作品」

レビュアー:USB農民 Adept

 久弥直樹さんの名前は、少し特別な名前として、私の記憶にずっと残っていました。

『ONE』『Kanon』で「泣きゲー」という一大ジャンルを築いた立役者の一人である久弥さんは、しかし『Kanon』以降、新作を発表することなく6年間が経過します。私はその間に、美少女ゲームとは疎遠になってしまい、その後の久弥さんの作品は遊んでいませんでしたので、今でも久弥さんの作品といえば『ONE』と『Kanon』というイメージが強いです。私が美少女ゲームに傾倒するきっかけとなった作品でもあります。十年前の作品ですが、今でも思い出深い作品です。

 ところで、久弥さんには代表作と言える作品がもう一つあります。上記の2作品に比べると知名度は劣るかもしれませんが、『MOON.』という、『ONE』以前に作られた作品です。この作品もまた、美少女ゲーム史において重要な作品なのですが、『サクラカグラ』の帯には『MOON.』の名前はありません。ただし、カバー見返しの著者略歴には『MOON.』についての記述があります。
 最初、不思議に思いましたが、本書を読み終えた今では、帯であえて『ONE』と『Kanon』の2作品を挙げていた意図もわかります。
 それは、『サクラカグラ』が『ONE』『Kannon』を想起させるストーリーとなっているからです。

『サクラカグラ』一巻は、本編の章2つと、短い断章の2つで構成されています。本編の章は、それぞれ視点人物を切り替えながら、学園内で誰にも知られずに起こっているとされる、不可思議な事件の謎に迫っていくストーリーです。
 最初の本編「コノハナカグラ」で、主人公の少女に明かされる真実は、『ONE』の「永遠の世界」を思い起こさせる設定です。また、2編目の「リンネカグラ」では、夜の後者で「悪」と戦う少女と、それを見守る主人公が描かれるのですが、これは『Kannon』の川澄舞シナリオを踏襲しています。
 つまり、明らかに『サクラカグラ』は、久弥さんの代表作2作品を踏まえて書かれています。
 読んでいる間、まるで『ONE』『Kannon』の「次の作品」を読んでいるような気分でした。私の中で『Kannon』から止まっていた久弥直樹作品が、再び動き出したような気がしたのです。

『サクラカグラ』はまだ一巻が出たばかりです。今後どう物語が展開していくのかわかりませんが、今からこの物語がどう完結するのか、私は楽しみでなりません。

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2014.06.18


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