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レビュアー「牛島」のレビュー

銅

『さやわかの星海社レビュアー騎士団』

「レビュアー騎士団とは、」

レビュアー:牛島 Adept

 さやわかの星海社レビュアー騎士団とは何か? この問いかけに対して、色々な答えがあるだろう。
 ある人は「雑誌の巻末によくあるアレ」と言い、ある人は「コアな星海社のファンの巣窟」と言う。「史上最強の読者コーナー」なんて言葉を掲げてもいる。そのどれもが正しいし、実際私も「コアな星海社のファン」として、「読書コーナー」に投稿するような感覚でいつもレビューを書いている。
 ここに集まる人の理由も様々だ。星海社そのもののファンの人もいれば、さやわか団長のファンもいる。単純な腕試しをしている人もいれば、ただひたすらに「布教すること」が好きだからという人もいる。もちろん、三人の姫候補のファンだという人もいるだろう。

 このように一言で語ることができないのがこのゲームの魅力だとは思う。だが、ただ一点、これがあるからこそ「さやわかの星海社レビュアー騎士団」なのだと答えられる点がある。
 
 それは「掲載されたレビューにさやわか団長と姫(もしくは姫候補)が講評・コメントをつける」というシステムだ。

 どのような感想も、批評も、誰かに読まれなければそれは壁に向かって話しかけるのと変わらない。「投稿したレビューにコメントをつける」というアシスタントの仕事というのは非常に重要なのだ。
 また、たとえそれを人目につく場所で公開したとしても、その文章について意見をもらえるとは限らないし、仮に何らかの反応があったとして、それが常に「講評」の域にまで届くものであることは稀だろう。
 こうした反応も含めて「さやわかの星海社レビュアー騎士団」なのだと私は思うのだ。

 読後の感想を書くことは本来非常に孤独な行為だ。しかしこのゲームにおいては、掲載と同時に生きた反応が返ってくる。「自分の書いた文書が読まれている」と実感できる。
 それは堅苦しい能書きなんて必要ないほどに、嬉しいことなのだ。

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2013.06.11

銅

『大日本さむらいがーる劇場』

至道流星ヒロインたちの「かわいさ」

レビュアー:牛島 Adept

 至道流星という小説家がいる。
「一つの作品に世界のすべてをこめる」といった創作のスタンスをデビュー作から続けており、その幅広い知識や経験、そして作中の魅力的なヒロインたちから高い評価を受けている作家だ。

 そう、至道流星が書くヒロインたちはどれも魅力的なのだ。『世界征服』の水之瀬凛。『羽月莉音の帝国』の羽月莉音。『好敵手オンリーワン』の桜月弥生と天都水貴。ここに挙げたのはメインヒロインたちだけだが、この他にも数多くの魅力的なヒロインたちが登場する。
 読者というのは欲深で、魅力的なキャラクターを見ては「もっと活躍してほしい」と思うものだ。間違ってもキャラに頼っただけの小説家ではないが、それでも彼女たちの活躍が作中だけで終わってしまうのは実にもったいないと思わせるだけのヒロインたちを、至道流星はうみだしてきたのだ。

 そこでこの『大日本さむらいがーる劇場』である。
 まず日毬がかわいい。チョロいけどかわいい。いや、チョロいところが最高にかわいい。
 千歳がかわいい。ポンコツだけどかわいい。由佳里がかわいいし凪紗もかわいい。杏奈もかわいい。川村一真氏の描く女の子はかわいい。かわいいしか出てこなくなるぐらいかわいい。

 本編である『大日本サムライガール』を読んで彼女たちに惚れ込んだ読者が毎週木曜日に幸せな気分になるぐらいにはかわいい。

 何度も言うが至道流星のヒロインはかわいい。こうした「ヒロインのかわいさ」に焦点を当てたスピンオフ作品とは相性がよく、今までなかったことが不思議なぐらいである。

 そして、こうしたヒロインのかわいい姿こそ、我々が見たかったものなのだ。

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2013.05.29

銀

『武器をつかむための軍手』

ウケ狙いじゃない!

レビュアー:牛島 Adept

 星海社が新書の販促として配っている軍手があります。
 白地に青い滑り止めで「SEIKAISYASINSYO」と書かれたそれは、見る人が見れば星海社新書のカバーデザインを意識したものだとわかるでしょう。
 斜めに入った文字は流れ星をあしらったラインを、右手側に大きく描かれた四角い窓は表紙や背表紙、しおりでもおなじみのロゴを表しています。ファングッズとしては使うのがもったいなくなる品ですが、あくまでこれは軍手です。
 本来は書店員に販促として配っているものだそうですが、五月に開催されたマチ★アソビの星海社ブースにて買い物をした人にも配られていました。

 さて。なぜ販促に軍手なのでしょうか。

「軍手とはその名の通り、武器を持つ人間のために開発されたものであり、『武器としての教養』を掲げるレーベル・星海社新書としてこれ以上ふさわしい販促があるだろうか、いやない!」……なんて書くと若干ウケ狙いのネタっぽいのですが、いえいえ。これはなかなかどうして考えられている販促です。

 書店で働いた経験がある人ならわかるでしょうが、書店員という人種は異常な速度で軍手を使い潰していきます。いくらあっても足りません。必要なとき軍手があるときないときでテンションが著しく下がるぐらいには書店員は軍手が好きなのです。いや本当に。
 こうした実用性の高い品を配るのは、書店員が同士だからこそでしょう。ネット書店の台頭があるとしても、未だにリアル書店という現場に立つ書店員の力は大きなものです。出版社から読者へと武器を渡す彼らこそ友軍であり、まさしくこれは「武器としての教養」を掲げる星海社新書にふさわしい販促です。

 今後もこの「武器をつかむための軍手」がイベント等で配布されるのかはわかりませんが、もし手にする機会があれば、こうしたことに思いを馳せてはいかがでしょう。

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2013.05.29

銅

『青春離婚』

×5の趣

レビュアー:牛島 Adept

 物語もいよいよ佳境になりつつあるコミカライズ版『青春離婚』ですが、さてみなさん。みなさんはこの作品を読むとき、いったいどのようにして読んでいるでしょうか?
 とりあえずスマートフォンを持っているのにパソコンで読んでいるそこのあなた。悪いことは言いません、今すぐスマフォで最前線につないでみてください。

 この『青春離婚』にはいくつか、読者が読みやすいように工夫がなされています。
 たとえば各コマをクリック(ないしはタップ)するだけで一コマずつ進む機能。
 たとえば郁美さんの心中の雲フキダシなど、複数のフォントを使い分ける職人芸。
 このほかにも大小さまざまな心配りが施されており、実際読むときにも非常に快適です。

 ではなぜスマートフォンで読むべきなのかですが、この作品は最初からスマートフォンで読まれることを前提にしてつくられているからです。これは『青春離婚』が描かれたスタイルと関係しています。

 HERO氏のサイトである読解アヘンなど、縦書きWEB漫画を読む人にはいまさらかもしれませんが、こうした描き方をされた漫画は、コマ単位で読まれることが多いのではないでしょうか。
 具体的な話をしましょう。
 一般的な画面サイズのデスクトップやノートパソコンで『青春離婚』を開くと、基本的に2コマないしは3コマずつの表示となります。縦に続いていく物語と横に長い画面では当然かもしれません。これも紙とWEBの違いの一つでしょうが、コマ(場面)の連続を区切ってくれていたページ(画面)という概念は、それを適切に表示する画面がないため、若干WEB漫画とは相性が悪いようです。
 必然物語はコマの連続という形になり、ページのような区切りは存在感を薄くします。
 こうした話は紙とWEBの表現の違いでは割と既出なもので、あるいはWEB漫画の表現の可能性として、あるいは漫画文化とWEBの祖語の一つとして語られることが多いようです。

 話を『青春離婚』とスマートフォンにもどしましょう。
 ここまで言えばもうお気づきかもしれませんが、そうです。縦長の画面で見た場合、これらのコマは一連のページとなって表現されます。
 実際、スマートフォンの縦長の画面で開いた場合『青春離婚』は5コマずつの表示となります。ブラウザ等の違いはありますが、画面をフルで使えばたいていの機種でこうした表示になるのではないでしょうか。おそらく横長のコマ割りも、5コマで表示した際に映える画面を計算されてのことでしょう。
 そしてこれはただ「縦方向に広い」「コマを連続して見ることができる」という単純な話ではありません。
 たとえば公開中の第五話、22コマ目から26コマ目を開いてみてください。

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「わ、わたしは……いいよっ。内緒で……」

『内緒』

「じゃあ、秘密ということで」

『秘密』

「……うん」

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 灯馬さんの言葉に郁美さんがドキッとするシーンなのですが、これ、スマートフォンで開くと見事に画面の中に収まります。郁美さんがかわいすぎて、スクリーンショットで保存しました。
 この場面に限った話ではないのですが、作者であるHERO氏はこうした5コマで区切られた「ページ」という枠組みを意識的かつ効果的に使っています。
 この見えない枠組みは、スマートフォンで読んだときにしか活きません。だから『青春離婚』はスマートフォンで読むための物語と言えるでしょう。

 見せ場となるシーンを、読み手の環境も計算にいれて執筆する。そうしたものもWEB漫画の要素の一つになるのかもしれません。

 ……さて。
 長々と書いてきましたが、私がこの計算された表現に惚れ込んだのは『青春離婚』がほかならぬスマートフォンが重要なキーになっている物語だからです。
 表現の発展だとか、この先のWEB漫画の形だとかは、正直どうでもいいのです。

 原作の紅玉いづき氏もHERO氏も「スマートフォンで読んでほしい」としきりにおっしゃってられました。おそらくそうした出発点から始まった「スマートフォンで見せる工夫」というものに、この作品への愛を感じずにはいられません。

 みなさんも是非、スマートフォンで読んでみてください。きっとパソコンで読むのとは一種違った趣があるはずです。

最前線で『青春離婚』を読む

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2012.05.18


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