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レビュアー「ゲッテル」のレビュー

銅

幸福論 西川聖蘭第一作品集

ただ戦慄してしまいました。

レビュアー:ゲッテル Novice

大塚英志氏の「ただ戦慄すればいい。」の帯通りに戦慄した。漫画はカラーページを除けば、色の付いているページは無い。それは当たり前なのだが、この作品程、”黒”しか似合うもののない作品は久しぶりだった。表題作の『幸福論』。唯、ただ黒い。笑みさえ黒い。誰しも持っているであろう負の部分を隠さない主人公・れおなの最後の笑顔は心からのモノだったのだろうだと思うのだが、正直とても同調出来るものではなかった。悪趣味なネット動画などで興奮を覚える辺りが、現代の世相を反映していて心底恐ろしい。自分もこの世界で生きているのだと思うと、本当に戦慄する。見たくはないが、目を背け続ける事もしてはいけないのではないかと強く感じさせられた。作者の方には、もっとリアルで尚且つ人間を抉る作品を描き続けてもらいたいと思った。

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2012.04.02

銀

Fate/Zero

ウェイバーとライダーが好きなんです。

レビュアー:ゲッテル Novice

人間ってこういう生き物なんだよ、と云う事を的確に示した究極作品だと感じた。

卑怯上等、自分の為なら他人がどうなろうと知ったことではない、女の嫉妬の恐ろしさ、興味への欲望、自分以外は全て雑種、一瞬の裏切り、追求心による残虐行為、報われない想い・・・・読んでて大丈夫なのだろうかこれ、と本気で恐ろしかった。
けど、やっぱりこれが世界なんだろうなと納得もした。
皆がおキレイな生き方をしているわけでも、恵まれているわけでも、幸せだと想っているわけでなく、生きて自分が納得したいがために他人を蹴落とし、裏切り、最終的には殺してまで自分を確立させようとする。

そして結局聖杯は絶望を与えてしまうという、皮肉に満ちた世界。
怖いけど、ワクワクしてしまった。次はどんな闇があるのかと期待もしてしまった。辛いのは自分だけではないんだと、変な安心感も持ちかけてしまった。

そんな真っ暗な中で唯一の救いだったのが、ウェイバーの成長だった。ライダーという永遠の師であり友情に恵まれ、本当の意味で心の強さを手に入れることが出来た少年。
『それは出来ない。ボクは生きろと命じられた。』
『もう彼は孤独ではない。』本当に何回読んでも涙が出る。
絶望だけじゃなく、こういった小さくても大きな希望も、世界には沢山ある、だから辛くても人は生きていけるということを全章を通して教えて貰った。
Fate/Zeroは、私の生き方のバイブルになった。

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2012.01.17


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