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読者レビュー

銅

サクラコ・アトミカ

虚構の中でしか、信じられないから。

レビュアー:横浜県 Adept

愛の力で世界を変える?

そんなのできっこない。
愛なんて、普通はちっぽけだ。世界となんて関わらない。
でもサクラコとナギは違った。
畸形都市・丁都を、世界を変えるために、自らの愛を全うするために。
彼らは戦い、愛を信じた。

だけど、そんなのは虚構だ。
現実の僕らは、愛で世界なんて変えられない。
でも変えたい。皆がそう思ってる。

だからこそ僕らは嫉妬する。
憧憬を抱き、犬村小六が描いた物語に欲情する。

そして僕らは、夢に縋りたくなって――。

「サクラコ・アトミカ」を、読まずにはいられない。

2011.04.28

のぞみ
読まずにはいられない、っていう最後の一文が良いなと思いました。
さやわか
そうそう、そこが決めゼリフになっていていいですな。美文的なレビューを書く場合は、こういう決めゼリフをいかにうまいポイントで使うかというのは大事です。もちろん、ラストに持ってきているのもいいですぞ。ただですな、このレビューは「現実に生きる僕らはこの作品のようには生きられない」という、わりと後ろ向きなポイントから書いてあるんですね。後ろ向きが悪いわけではないけれど、前半の閉じた感じと最後の決めゼリフの積極性とを比較するとややチグハグな印象があります。ということで「銅」とさせていただきます。

本文はここまでです。