ここから本文です。

カテゴリ: 編集部より

編集部ブログ 白倉由美の「死ぬ話」

革命

 彼女は革命を夢みている。秋風が黄金色に染めた木の葉がはらはらと舞い散る。彼女は茶色のローファーで、死んでゆく草の葉を踏んでいく。

「ここにはもう、いたくないなあ。でも遠くにいきたいのとも違うの。ここにいたままで、世界が変わるといいのに。夏が過ぎ去って、夕闇が長い影を連れて落ちてくるように。なにもかも、急激に変化すればいいのに」

首輪

 七歳の誕生日の日、彼は父親のパソコンで遊んでいる。そして偶然ある動画をみる。今思うと、それはリベンジポルノだ。彼より年上の女の子が誰かの手で制服を脱がされている。そしてーーー。それがどういう行為なのか、幼い彼にはわからない。でもなにかあやういことをしているというメッセージは伝わる。

 みてはいけないものをみた。彼はそう思い、パソコンを閉じる。父親の部屋を出て、庭に向かう。木々はもう紅葉して、白い柵の向こう側に下校中の女生徒が通る。その姿にさっきみた映像が重なる。彼の心臓の鼓動が、彼に背徳というあたらしい気持ちを味あわせる。

 なんだろう、この気持ち。

水晶文旦

 坂の上に水菓子屋がある。僕が幼い頃からその店は、甘く、瑞々しい香りを周囲に振りまいている。お祭りの日、まだ小学生だった姉と僕はスイカを一切れずつ買って、一緒に食べた。甘い蜜で姉の赤いくちびるが濡れていた。

 そんなことを思い出したのは、姉が原因不明の病に倒れ、ずっと家で熱い息を漏らして眠っているからだ。あの水菓子屋でなにか買おう。身体の冷える水菓子を。熱のある姉のために。僕はわりあい冷淡な性格ではある。ひとのためになにかをすることはほとんどといって、ない。損をすることがいやだ。だがたまには善い行いをしたいと思うのはひとの常であろう。今日の僕はそんな気分だった。春の宵に煙る青い空のせいだろう。空気に漂う花の香りのせいだろう。

 裏庭の木戸をあけ、下駄のまま庭をでた。

読書猿

 今日、彼女は下着をつけていない。そういう、やや奇妙な傾向が彼女の性格にはあった。怠惰で、よく忘れ物をしたり、食事をとらなかたりするし、その上、他人の話をきかない。

 下着をつけずに学校にいき、何事もないような顔で授業を受ける。チェックのスカートの下に、彼女の秘密が手紙の封を切ったようにみえることを、誰も気がつかない。

 制服の短いスカートを風が揺らす。けれども彼女はそんなことにまったく頓着しない。放課後になると、そのまま携帯電話を買い替えに街で一番大きな家電量販店に向かった。




本文はここまでです。